高松高等裁判所 昭和61年(う)25号 判決
検察官は,公訴の提起につき広範な裁量権を有しており,右裁量権の逸脱が公訴の提起を無効ならしめる場合とは,公訴の提起自体が職務犯罪を構成するような極限的な場合に限られるものというべきところ,証拠によれば,本件切出しは,錆びており,「切る」性能はかなり劣るうえ,鞘から引き出しにくいことがみとめられるが,他方,先端部分は鋭いうえ錆も少なく,柄は木質で太く,刃の厚みは3ミリメートル,刃体の幅2.2センチメートル,刃体の長さ7.5センチメートルであり(ちなみに右項目のいずれもが,「切出し」につき,特に政令が携帯禁止基準と定めた数値をこえている),突く能力はかなり強力なことが窺われ,人に対する殺傷の危険性は高いと認められる。このような危険な刃物を正当な理由もなく持ち歩く時は,事前にそのような気持ちがなく,しかもその必要もない場合でも多少の刺戟で容易にこれを使用し,他人に重大な危害を及ぼす恐れがあり,従つて,これを禁圧する必要があるのであつて,これが銃砲刀剣類所持等取締法22条の法意というべきであるから,このような凶器と化すおそれのある刃物を自転車の前かごに取り付けた袋に入れ,夜間正当な理由もなく,持ち歩いていた被告人に対しなされた本件公訴の提起が,公訴権の濫用と言えないこともまた明らかである。